夕日が沈むのを見て、日本人なら大抵はしみじみとするでしょうが、イビザの人々は全く違います。サンセットを見るためにたくさんの人が集まり、ジャンベを鳴らしてお祭り騒ぎです。そして、太陽が水平線の下に沈む瞬間、ビーチにいるみんなが拍手と歓声を上げます。世界中から来た様々な人種、国籍の人たちが、今この瞬間、この場所で生きていることの喜びを共有し合っているのです。
昨日はサンセットを見に、ビーチに行ってきました。イビザの太陽は、空気が乾いているからかギラギラとしていて、サングラス無しで外出するのはちょっと目が痛いです。みんなサングラスはファッションでしているのもありますが、イビザで生活するには必需品なのです。
ビーチのちょっとした岬の先端にあるカジュアルなダンスミュージックのかかったレストラン(日本で言う海の家にあたる)に入ってメニューを見ると、なんと一番最初に「SUSHI」がありました。よく見ると、カリフォルニアロール的なものやT-MAKIという謎の巻物もあります・・・・・・彼らが考えるSUSHIとは一体どんなものだろう、食べるしかない!
そこで一番日本との違いがわかるであろう、普通の握り(サーモンとハマチ)を頼みました。スペイン人の店員がドンっとテーブルに置いたのは、見た目は普通の握り。しかし異変に気付きます。醤油がない。これをそのまま食べろというのか?笑
もう一度店員を呼んで醤油を頼みました。
「ソイソース」
「???」
「ソイソース!」
「ソーイ??」
「ソーイ!」
ちゃんと醤油が来るか心配でしたが、どうやら醤油らしいものが来ました。
すると店員は何を思ったのか、器にめんつゆのごとくドボドボと醤油を注いでいます。たった二貫の握りなのに。そして、わさびがサワークリームみたいに大量に盛ってあります。
DJ Marbo 「みんなそうやって食べてるってことだよ」
一緒に来ていたDJ Marboが言いました。こっちでは握りを醤油浸しにして、たっぷりわさびを塗って食べるようです。醤油をちょっとだけつけて食べてみました。なんか甘い・・・・・・シャリも硬いし、これは寿司か?
DJ Marbo 「こっちで日本のもの食べちゃダメだよ。その国のものを食べなきゃ。スペインに来たらスペインのものを食べる!」
※DJ Marboは世界的に有名なDJ。イビザでも人気のTokyo Balearicを主宰している。
ところで、周りを見回すと、イケイケの人ばかり。日本で言う「リア充」を極めたような人たちばかりです。こんな光景は日本では見られないでしょう。すごいところに来たなーと最初は居心地が悪く感じていました。
DJ Marbo「リア充ていうか、これが普通なんだよ。そこらへんでおばちゃんがダンスしてるでしょ。それが当たり前。人生は楽しむためにあるんだから。日本ではオタクが普通だけど、イタリア人が見たらうつ病なのかって心配するよ!」
そう。ここにいる人たちは、みんな人生を楽しんでいます。よく見ると、子供が騒ぎ回って、あちこちでいたずらしたりしていて、とてもリラックスした空間でした。サンセットが近くなると、さっきまで気取っていた人たちが、満面の笑みで、自撮り棒を出して夕日と自分たちを撮影しています。僕もすっかりこの場所がコンフォートになってしまいました。
火のついた線香花火の先端のような鮮やかな太陽が水平線の下に沈んでいく時、拍手と歓声が沸き起こりました。生きていることの喜びを味わい、みんなで共有する、宗教的な瞬間です。
見渡す限りの水平線に太陽が沈むところは、丸い地球の輪郭に、宇宙空間を隔てて太陽が隠れていくところをリアルに感じさせます。サンセットの反対側の空を見ると、ほぼ満月の月が、砂漠の上に綺麗に浮かんでいました。まるで、火星にいるような感覚でした。