ホームレスの人が街中に住んでいるのを見たことがありますか?路上でダンボールの家を作って寝ていたり、公園の中に本格的な家を作っていたり、あなたもホームレスをどこかで見たことがあるはずです。
それを見てどう思いましたか?
おそらくいろいろな反応があるでしょう。かわいそうとか、ホームレスはいなくなったほうがいい、とかさまざまな感想があると思います。あるいは自分もホームレスだという方もいるかもしれません。
その感想はどうでもいいのですが、その感想はわれわれがそれぞれの視点から見て、勝手にそう思っているに過ぎません。
坂口恭平氏の『独立国家の作り方』という本には、あるホームレスの男性の話が書かれています。ある人は、路上に小さな家を作って生活していたのですが、その家は家というにはあまりに狭いものでした。
そこで坂口氏が話をしたところ、そのホームレスの男性はこの家は寝室だ、と言ったそうです。これはどういうことでしょうか?実はそのホームレスの男性は、街を自分の家と見立てて、いろんな場所に家の機能が分散して持たせていたのです。
われわれは普段街をそういった見方で捉えてはいません。たいてい、路上に寝室を作ろうなどとは思わないし、街が自分の家や庭だとは考えていません。
坂口氏はこのようなさまざまなものの捉え方を「レイヤー」といっています。
人によってどのレイヤーでものを見ているかは違います。このホームレスの男性は街に独自の機能を持たせています。男性にとっては、街はわれわれが見ているのとはずいぶん違った見え方をしているのです。
われわれは気づかないうちに、自分の固定的なものの見方が絶対のものだと思い込んでしまいます。しかし、人によってどのようなレイヤーでものごとを捉えるのかは違うのです。恋人同士が二人とも同じ景色を見ていると思っていても、各々全く違う景色を見ています。子供と大人ではたとえ家族であっても、住んでいる世界がまるで違うのです。
人と話していて、理解し合えないのは、違うレイヤーを見ているからかもしれません。このことにいつも自覚的になる必要があります。ともすれば私たちは自分の見ている世界が唯一のものだと思ってしまいがちです。自分には見えていない世界があることや、他人は自分とは違う世界を見ているんだということを頭に入れておかなければ、お互いの理解も遠のいてしまうでしょう。
『独立国家の作り方』の中には、アクセサリーなどの貴金属を拾って、月に50万円稼ぐホームレスの話もありました。このホームレスの方にとっては、街は貴金属が豊富にある鉱山のように見えているかもしれません。
ホームレスがかわいそうだ、と思っても実はそのホームレスは自分よりもお金があって自由な暮らしをしている可能性もあります。もちろんホームレスじゃなくなりたいと思っている人もいるでしょうが、ホームレスがかわいそうというのも、固定的な見方です。
人によってさまざまなレイヤーがあるんだということに無知になると、差別や偏見を生むことになります。もちろん自分が見ていないレイヤーのことを理解するのはなかなか難しいことです。でも、自分には知らないレイヤーがある、自分には見えていないものがあるということを頭においておけば、差別や偏見はなくなっていくでしょう。
私はコーチングの際に、クライアントがどのようなレイヤーを持っているのかということを見ていきます。そして、新しいレイヤーを手に入れてもらい、全く違った世界の見方ができるようになってもらうのです。新しいレイヤーは、ゴールの世界のレイヤーです。ゴールの世界のレイヤーの中で生きるようになれば、努力しなくとも自然とゴールの世界が実現していきます。
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