ゴール設定をする時に、「抽象度」という考え方が重要ですがこれはよく誤解される言葉です。抽象度について正しく理解することでよりあなたにとって良いゴール設定ができるようになります。
抽象度とは何か
抽象度とは「情報的な視点の高さ」のことを言います。例えば、「ヒト」という概念の抽象度を上げると、「サル」になります。「サル」から抽象度を上げると「哺乳類」となります。このように、情報には階層があって、それがどのくらいの高さなのかを「抽象度」という言葉で表します。
抽象度を上げる
そして、コーチングの中でよく言われているのが「抽象度を上げる」ことです。ゴールを設定する時に「抽象度をあげましょう」と言われます。そうすることで、視点が高くなって現状を超えたゴールや、大きなゴールが設定しやすくなるのです。
抽象度の良くある誤解とは
では抽象度に関する良くある誤解とは何でしょうか?それは、抽象度を上げることが単純に「お金の額を大きくする」「範囲を広くする」「人数を多くする」ということと同じだと捉えられることです。
例えば聞いた話ですが、ある人がコーチングを受けている際に収入面の話をしていました。その時にコーチに収入の桁を増やすように指導されて億単位の収入のゴールを設定したそうです。しかしそれには違和感を感じたそうです。
もちろん、それは一つのやり方として良いのですが、こればかりが抽象度を上げることではありません。しかし、「もっと多く」という感じで額を増やすことが抽象度だと考えられていることがあります。
また、個人的な問題や悩み、身近なトラブルに関することよりも社会問題とか原発問題などのような「大きな問題」の方が抽象度が高いと考えられることがあります。実はこれも誤解です。
表面的に「大きいから、広いから、多いからいい」というわけではないのです。「大所高所」に立っているから偉いみたいな考え方と一緒です。
ある高名な博士が「俺の発信する情報は、安倍総理も応援してるんだ!と思ったらエフィカシーが上がる」ということを言ったそうですが、これも同じような発想の類型と言えます。
抽象度の正しい理解とは
では、抽象度を正しく理解するためにはどうしたらいいでしょうか?そのためには基本に帰って、抽象度のそもそもの意味を考えることです。抽象度とは、情報的な視点の高さのことであって、言い方を変えれば「概念」の階層のことです。
経済学の世界では、現在は行動経済学が主流になっています。これは簡単に言うと「心理学から経済を考える」ということです。その前の経済学は心理学を無視して人間を合理的なロボットのように考えていたのです。
今は、経済というものが人間の心によって作られていて、合理的にはならないとわかっています。ではマクロ経済のように「世界経済」「国家経済」ではなく心理学になったからといって、抽象度が低いでしょうか?違いますね。「心」や「認識」というより根本的な高い視点に立ったと言えます。
あるいは、先生と生徒の関係について考えていて、具体的には身近な教室でのできごとについて思いを巡らせている人がいたとします。この時
「そんな身の周りのことを考えている暇があったら、抽象度を上げて世界平和やエネルギー問題について考えてください」と言えるでしょうか?私は言えないと思います。
というのも、先生と生徒の関係の中には「権力」「全体主義」「自由」「平等」などの問題が含まれています。これは戦争やエネルギー問題と同じことなのです。
どこにでも全てが含まれている
基本に戻って考えましょう。2500年前に、インドで釈迦がやったことは自らの認識を見つめることでした。その結果悟りを開いて、万物の真理を見出したのです。真理(抽象度の高い原理)がどこか遠くにあるということではありません。
親子関係の中にもあるし、そのへんの石ころの中にだって真理が含まれています。数学者だって1、2、3・・・というような小学生でも読める数字の並びの中に法則を見つけているのです。それが実は宇宙の原理だったりします。
単純に、大きい高い広いというのは、抽象度を上げる時の一つの方法論に過ぎず、そうでなければ抽象度が低い、下らないということにはなりません。
誤解してしまうと、「総理みたいに票と権力と予算をたくさん持っている人から褒められたからみんなより偉いぞ」という発想になってしまいます。あるいは、お金をいっぱい持ってるぞとか、人気者だぞ、フォロワーがたくさんいるぞ、だから抽象度が高いんだという考え方が生まれてしまいます。
そうすると逆に本当のところからは遠ざかってしまいます。権力に執着して異なる意見を認めなくなったり、お金が稼げれば何をしてもいいとなったりする可能性もあります。
そうではなくて、どんな場所からでもあらゆることに繋がっているのです。