過去にとても嫌なことがあった、ひどい扱いを受けた、などの経験からトラウマを抱えてしまっている人がいます。生きている以上、思い通りに行かないことや、不快なこと、苦難に遭遇することは避けられません。しかし、こうしたつらい出来事をトラウマにせずに済んだり、あるいはトラウマを解消したりする方法があります。これから、自分でできる3つのトラウマ解消法を3回かけてご紹介します。
3つの方法とは、
①視点を上げて考える
②自己責任を意識する
③未来からの判断
です。この3つの方法を実践することで、過去にとらわれて身動きできなくなる、ということの多くは解消してしまうでしょう。また、今後起こるさまざまな苦難に対しても対処していけるはずです。
第1回は、「視点を上げて考える」。
トラウマを持つような出来事は、人間関係に関することがほとんどでしょう。たとえば、「学校でいじめをうけて心の傷になった」とか、「上司にパワハラをされた」など。こうしたことがトラウマになってしまうのは、自分の感情ばかりにフォーカスが行ってしまい、ものごとを表面的にしか捉えられないからです。ただただ、コントロールできない嫌な感情だけが心に張り付いて離れないという状態になってしまいます。
そのような状態を解消するには、自分の感情ばかりを見るのではなく、ものごとを立体的に見ていくことが必要です。視点を上げて考えてみましょう。視点を上げるとは、自分以外の状況を客観的に考えてみることです。こうすることで、
・出来事に対する評価が変わる
・前頭前野が優位になり、感情のコントロールが可能になる
それによって、トラウマティックな感情もすっと消えてしまいます。
たとえば、いじめがトラウマになっている人の場合。いじめをした人の状況を考えてみると、そのときは精神的に未熟だったのかもしれません。また、その日たまたま嫌なことがあったためにいじめをしたのかもしれません。相手がなぜそのような行為に及んでしまったのか、ということを考えてみるのです。
人間は状況によって行動を変えます。状況とは、その人が持っている人間関係や、社会環境、知識、そのときの感情などの、その人を取り巻く全てのことです。相手の状況を考えることで、「それなりの理由があったのだな」ということがわかるかもしれません。もちろんこれで相手の非が無くなるというわけではありませんが、相手の状況を考えることで怒りや恐怖、恨みの感情は和らぎます。
あるいは、事故などの危機に遭遇した場合。冷静に周囲の状況や、今後のことについて分析していきます。出血がないか、怪我は打撲か骨折か、2次被害を防ぐためにどう対処すべきか、保険金は・・・・・・などなど考えていくのです。
視点を上げて考えるのは、脳の前頭前野を使って抽象度を上げることです。自分の感情だけにフォーカスしているときは、抽象度が低い状態です。これだと、脳の前頭前野が働かず、恐怖や怒りなどの原始的な脳による強烈な感情のとりこになってしまいます。感情は抽象度の高い判断、つまり前頭前野からの介入によって変えることができるので、視点を上げて考えることで感情の暴走が止みます。それによってトラウマが解消したり、トラウマになるのを防ぐことができるようになるのです。
以上をまとめると、視点を上げて状況を考えることで、出来事に対する評価が変わり、感情が変わる。そして、脳の前頭前野が優位になり、恨み、怒り、恐怖などのトラウマティックな感情が解消されたり、コントロール可能になるのです。
次回は、「自己責任を意識する」についてお話します。